2018年7月に不妊治療を始めてから、男性不妊がわかり、精索静脈瘤の手術、タイミング法、人工授精と行ってきましたが、子どもを授かることができず、2019年8月に体外受精へステップアップしました。
人工授精は3回挑戦し、一度は濃縮後の運動率は90%を超え、総運動精子数も1500万を超えた状態もありましたが、残念な結果となりました。
頭では理解していましたが、どんなに精液の状態が良くてもできないときはできないものだと思い知りました。もう少し続けてみても良かったのですが、人工授精は3回で諦めて、体外受精に移行しましたので、その時の状況や気持ちをまとめることにしました。
これまでの不妊治療
2018年夏。
2013年に結婚して、5年たってもなかなか授からなかったし、妻も30歳になることもあり、クリニックに不妊の相談をすることにしました。
2018年7月23日、婦人科クリニックで精液検査をしたところ、精子濃度800万/ml、運動率25%という結果で『乏精子症』と診断されました。妻は全く異常なし。
ここから、僕たちの不妊治療はスタートします。
精索静脈瘤の手術(2018年8月~10月)
2回目の精液検査の結果も良くなく、男性不妊を専門に扱っている泌尿器科のクリニックを紹介してもらいました。
男性不妊クリニックの検査の結果、左右両方に精索静脈瘤があることがわかりました。しかも、かなり大きな。
2018年10月10日、精索静脈瘤の手術を受けました。術後の2ヶ月ほどは濃度も回復してきており順調に見えたのですが、3ヶ月後以降はあまり良い状態になりませんでした。
精索静脈瘤はなくなったんですけどね。
手術の様子や術後の精液検査の経過は以下の記事にまとめています。
タイミング法(2018年8月~2019年2月)
精索静脈瘤の治療と並行して、タイミング法を行っていました。
期間は 2018年8月、9月に2回挑戦しました。
精子は子宮内で5日ほど生きられるそうなので、濃度が低い分、回数を重ねようと排卵の1週間前くらいから頑張ったのですが。。。
その後、2018年10月~2019年1月は精索静脈瘤の手術の大事をとって、一旦休憩しました。
そして、2019年2月に3回目に挑戦しました。
ここでタイミング法を諦めます。
タイミング法を諦めた理由としては、1月の精液検査で数値が手術前の状態に戻ったためです。12月の検査までは総精子数は1億近くあり、自然妊娠も可能性として有り得る値でしたが、2000万近くまで落ちしてしまった為、このままタイミングを続けることに対して可能性を感じなくなってしまいました。
本当は2月の時点で人工授精をしたかったのですが、クリニックの方針で3回は試してみようということになりました。
今思えば、休憩せずにタイミング法を続けていればよかった。
人工授精(2019年3月~2019年5月)
2019年3月から人工授精をスタートします。
人工授精に挑戦した期間は2019年3月~5月の3回です。
精子の状態も良くなかったので、本当は人工授精のステップを飛ばして、体外受精を行いたかったのですが、クリニックの先生が保守的だったため、最低でも3回は人工授精してみましょうと説得され、挑戦することにしました。
精液の濃縮後の運動率
人工授精では、採取した精液を濃縮し、子宮に直接流し込みます。
その為、精液中の精子濃度が多少悪くても精液量が多ければ濃度を高めることができますし、動きのよい精子を集めることで運動率も高くなります。
この濃縮後の数値が妊娠において重要になります。数値が悪いと子宮への注入を諦める場合もあります。
僕が3回の人工授精で採取した精液の状態は以下の通りです。
検査日 | 2019/03/12 | 2019/03/12 | 2019/04/15 | 2019/05/17 |
精液量(ml) | 3.4 | 1.6 | 3.2 | 4.4 |
精子濃度(/ml) | 3,200,000 | 6,900,000 | 12,000,000 | 22,000,000 |
総精子数 | 10,880,000 | 11,040,000 | 38,400,000 | 96,800,000 |
精子運動率(%) | 63% | 49% | 33% | 86% |
運動精子数 | 6,854,400 | 5,409,600 | 12,672,000 | 83,248,000 |
高速直進運動率(%) | 63 | 48 | 33 | 86 |
奇形率(%) | 30% | 31% | 58% | 23% |
禁欲期間(日) | 2 | 0 | 1 | 2 |
2019年3月12日に2回採精を行っているのは、1回目の運動精子数が680万しかなかったため、人工授精できないと判断になり、2回目採精することになりました。このときは、院内での採精だったので、2回目に対応できました。2回分の精液を合わせて濃縮することで何とか人工授精することができました。
因みに、3月12日は院内採精でしたが、その他の人工授精では、自宅採精です。仕事を休むことができませんでした(泣)
射精時のストレスによっても、数値に影響が出るようで自宅で採精する方が数値が良くなる人は多い傾向にあるようなことが、男性不妊の第一人者として有名な岡田先生の著書に書かれていました。
クリニックでの採精でなかなか良い数値が出ない人は一度、自宅で採精してみてもいいかもしれません。
採精した精液は元気よく動いている精子を集めて濃縮します。
濃縮後の精液の状態は以下のとおりです。
検査日 | 2019/03/12 | 2019/04/15 | 2019/05/17 |
精液量(ml) | 0.5 | 0.5 | 0.5 |
精子濃度(/ml) | 23,000,000 | 32,000,000 | 33,000,000 |
総精子数 | 11,500,000 | 16,000,000 | 16,500,000 |
精子運動率(%) | 87% | 81% | 94% |
運動精子数 | 10,005,000 | 12,960,000 | 15,510,000 |
高速直進運動率(%) | 78% | 69% | 91% |
奇形率(%) | 17% | 25% | 15% |
禁欲期間(日) | 2 | 2 | 2 |
僕たちの通っているクリニックでは子宮に注入する精液量は0.5mlで調整されています。
5月17日の精子の状態はかなり良く濃縮後の高速直進運動率は90%を超えています。つまり、しっかりとまっすぐ動いている精子は1500万匹もいるということです。
これには、かなり期待しましたが結果は残念なものとなりました。
人工授精の成功率
人工授精に必要な運動精子数
人工授精可能な総運動精子数は1000万が目安と言われています。泌尿器科でも婦人科でも同じでしたので、一般的な基準値が1000万なのは間違いなさそうです。クリニックによっては500万としているところもあるようですが。
因みに、人工授精の際に使う精液量は0.5mlに調整されますので、濃度としては2000万/mlを超えなければいけません。濃縮後の精子濃度が2000万/mlが見込めない場合は、院内採精であれば、再び採精となります。1回目のときがそうでした。
僕の濃縮後の総運動精子数は以下の通りです。たまたまですが、徐々に良くなっています。
人工授精の成功率
不妊治療を考えたら読む本 科学でわかる「妊娠への近道」 (ブルーバックス)によると人工授精の妊娠率は、1周期あたり5~9%となっています。しかも、初回で妊娠する確率が最も高く9%以上となり、2回目以降の妊娠率はあまり変わらず、6%~8%の間を推移しているようです。
しかし、人工授精を実施した人全体の累積妊娠率は6回目で90%を超えますが、そこから頭打ちでほとんど妊娠率は上がりません。その為、高齢でない場合、6回は人工授精を続けてみませんかと提案されます。
人工授精を諦めた理由
僕たちは人工授精に3回挑戦しましたが、4回目は諦めて体外受精へステップアップすることにしました。理由は1年以上精子の状態を見ていて、これ以上精子の状態が良くなる見込みがなく、維持できるとも思えなかったためです。また、2人目までは頑張りたいという想いがありますので、1日でも早く子どもを授かりたいという焦りもありました。
精子に対する不安
初回の精液検査から精索静脈瘤の手術、タイミング法、人工授精と約1年かけてステップアップしてきました。その間の総運動精子数は以下のグラフの通り安定していません。
精索静脈瘤の手術は2018年10月に行っています。術後、2ヶ月ほどはそこそこ数値は良かったのですが、年明けてからは絶望的です。2019/3/12については、2回分の採精の合計値になります。
3月、4月と相対的に数値は良くありませんが、前項の通り精製後は1000万を超えていますので、人工授精は実施できています。
最も状態が良かったのが、人工授精3回目(5/17)のときです。濃度及び運動率もかなり良く、これまでにない数値をたたき出しました。さすがに興奮して「これはもしや・・・」と期待が膨らみましたが、残念ながら着床まで至りませんでした。
これが精神的に決定打となり、これ以上人工授精を続けることができませんでした。期待が大きくならなければ、もう少し続けていたかもしれません。一喜一憂しない精神力が欲しいです。
ただ、同じような数値を今後出せるとは思えませんし、精子以外の原因が実はあるかもしれませんので、このタイミングで体外受精にステップアップしたことに後悔はありません。
また、「不妊治療を考えたら読む本」の以下の一文が背中を押してくれました。
浅田 の クリニック で 2003 ~ 2005 年 に 統計 を とっ た ところ、 初めて 行わ れ た 体外受精 の 臨床 妊娠 率( 尿検査 による 妊娠 反応 が 陽性 で あっ た だけでは なく、 超音波検査 で 胎児 の 入っ て いる 袋「 胎囊」 が 確認 でき、 継続 の 見込み が 高く なっ た 妊娠 の 率) が、 全体 では 32・6% で あっ た の に対し、 人工授精 から ステップ アップ し た ばかりの カップル では 62・5% と 2 倍 近く も 高い もの に なっ て い まし た。
浅田義正; 河合蘭. 不妊治療を考えたら読む本 科学でわかる「妊娠への近道」 (ブルーバックス)
おわりに
タイミング法、人工授精、体外受精といつステップアップするのかは、妻とすごく話し合いました。僕はどうしても経済的な側面から考えてしまいがちになり、妻とぶつかることもあります。数値だけ見ると人工授精を続けても良かったし、体外受精までステップアップしなくて済めば、経済的な負担はかなり抑えられます。
でも、精神面がついていきませんね。しかも、妻の方が圧倒的に負担が大きいので、申し訳ない気持ちにどうしてもなってしまいます。妻はそんな風に考えないでって言ってくれるけど。
くよくよしててもしょうがないので、妻と2人の時間を楽しみながら、治療に打ち込んでいきます。
幸いなことに体外受精は順調に進んでいて、初期胚2個、胚盤胞4個が無事凍結できました。このまま移植もうまくいくといいです。
不妊治療を進めていく中で、不安なことが多く悩みごとは絶えませんが、その都度インターネットや書籍から情報収集しています。不妊関係の書籍は10冊以上読んできていますが、個人的に一番ためになったのが、不妊治療を考えたら読む本 科学でわかる「妊娠への近道」 (ブルーバックス)でした。
今後の治療方法を考えるときやステップアップのタイミングなどには、必ず読み返しています。タイトルに「科学でわかる」とあるように書かれてある内容の根拠がしっかりしていて納得しながら読むことができます。専門用語も出てきますが、わかりやすい言葉で書いてあるので、読み進めやすかったです。クリニックの先生は基本的に質問しないと教えてくれないので、こちらもある程度知識がないと質問できませんし、納得できないと治療も進められません。
有名な書籍ですが、まだ読んだことがない方は是非読んでみてください。
男性不妊では岡田先生の男を維持する「精子力」が良書です。タイトルはあれですが、男性不妊に特化した書籍であり、この本以上に男性不妊を詳しく解説している本はみたことがありません。というか、そもそも男性不妊に関する書籍が少なすぎます。男性不妊と診断されてからとるべき行動はすべて教えてくれます。因みに、岡田先生は男性不妊治療の第一人者であり、2018年に放送されたNHKスペシャル「ニッポン“精子力”クライシス」にも出てきた男性不妊のスペシャリストです。
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